職業上、毎月10日ごろに出る九州運輸局の公示情報を確認している。バス会社の出す改廃情報はかなりギリギリになることが多いことと、各社のページを見ないと確認できないので、申請時点でわかる局の情報が有益である。
2010年度に入ってから、九州のバスは色々な動きがあった。
高速バスの新設ラッシュは、こんな路線を開拓したものだと感心するものが多い。福岡-三重線、北九州-大分線、福岡-佐伯線(これは昨年末から運行中)、北九州-マリノアシティ(福岡市)・鳥栖プレミアムアウトレット、福岡-ハウステンボス・佐々(佐世保線の延伸)が目立ったところである。最近の西鉄のビジネスモデルは、車両まで相手先の分を丸抱えした路線と思しきものが多いことである。三重線や佐伯線は西鉄が車両をリースしているそうで、西鉄の車両がそのままの色で相手会社の車として走っている。短距離のマリノアシティ・鳥栖アウトレット線は別として、相手先との調整が良くできたと思う路線が見られた。なお、佐世保線の延伸であるハウステンボス線は、8年ぶりの復活であり、ハウステンボス再建のため西鉄が出資したことからも、再建支援の色が強いと考えられる。
ただ、一方でここにあげた路線を含め廃止も出ているのは事実であり、福岡-佐伯は8月末でいったん廃止(正確には休止になるのであろう=年末年始に復活の予定)、北九州-マリノアシティは8月のセール時期の実験運行で終了している。県外では、神戸-熊本・鹿児島線「トワイライト神戸」の休止が決まっている。いささか古いが、3月末には西鉄が関係する高速バス路線のリストラが相当行われたことは記憶に新しく、減便で済んだところもあれば、共同運行から撤退し相手方のみの運行となったため減便した例もある(北九州-熊本・長崎など)。
これらの路線の中で、トワイライト神戸号は既に熊本・神戸在住中に何度か世話になっているが、佐伯線は(別の記事で書いたが)8/26最終日の福岡発初便(西鉄運行便)に、北九州-大分線は大分発で1回(亀の井担当)、北九州発で2回乗っている。
この佐伯線・北九州線の両路線、驚くまでに対照的である。週末限定運行という点は同じであるが、佐伯線の西鉄便は4列シート車で車内自動放送なし(ちなみに大分バスへのリース車は3列のスーパーハイデッカー)、北九州線の西鉄便は3列のスーパーハイデッカーでご丁寧に運賃表示機も自動放送もある(大分側の2社はハイデッカーの3列車で放送なし)。
この差は何でついたのか今もってわからないが、少なくとも佐伯線の車両設備格差はいただけなかった。実際、大分-福岡線でも大分側2社と西鉄とでは車両格差があり(別府線はないが、各駅停車は車両がバラバラ)、わざわざ大分側の運行便を狙う人は少なくない。福岡-大分線であれば流動も大きいので収容力の問題から4列車になる理由は分からなくはないが(過去北九州-福岡線に3列車を入れたがすぐ4列に戻った)、佐伯線ほどの規模でその差はないような気がする。回数券や往復券の発行も、佐伯線はないが北九州線はあるという具合で、差が出ている(こればかりは採算面があるので仕方ないかもしれないが)。
両路線に乗った感触では、定期運行化には相当ハードルが高い気がした。私の数少ない乗車経験では、両路線とも1ケタ後半が良いところで、定着している感じではなかった。価格競争力がないわけではないが、共通しているのは、「どの客層を狙っているのか=バスの特性から見た客層は誰なのか」がダイヤや価格設定を見ても分からず、知名度が不足していることが致命的である。北九州線は、高速道路無料化の実験区間の走行が多く、一般車増加の影響で遅延することがネックになっている。
ここに書いた、『「どの客層を狙っているのか=バスの特性から見た客層は誰なのか」がダイヤや価格設定を見ても分からず』、というくだり、実は高速バス路線の多くに共通している問題であり、こと大分の路線はそれが目立つような気がする。
福岡-大分線や、大分空港のリムジンバスが良い例になる。
大分市の都市構造を考えると、大分駅や中心部は商業の拠点ではあっても、住民の居住地ではない。大分の都市計画の生んだ悲劇であるのだが、大分市の住民の居住者は、大半が大分駅から5キロ以上離れたエリアに居住しており、市内にある高速のインターチェンジ近辺(大分光吉・大分米良・大分宮河内)あるいはインターから5キロ圏にかなりの団地が集中している。ということは、高速バスであれJRであれ、大分駅へ(から)のアクセスという2(3)次交通が欠かせないことになる。しかし、残念ながらこの2次アクセスへのコネクションは全く考慮されていない。路線設定はおろか、時刻設定や商品の販売時に考慮されていないのは、私は致命的であると考える。なぜなら、大分駅近辺に住んでいる人かビジネス客以外の圧倒的大多数が「消えて」いるからに他ならない。
JRでは、残念ながらカバーできる大分市の居住エリアは限定的である。しかし、バスであれば、少なくとも大分側2社の持つ許可エリアで完全にカバーできる。この優位性は非常に大きく、普通であれば商売に活かされていても何らおかしくない。その市場を全く放棄しているのは実にもったいないの一言である。
利用者のコスト計算で考えると、バスに乗って回数券等で安くあげても、大分中心部から家までは車になるか(パークアンドライド)、バス代に近いかそれ以上のタクシー代を払うという選択肢を強いられる。クルマのコスト計算は、税や保険・購入費の割賦といった「固定費」を意識せず、「可変費」のガソリン代と高速代ぐらいである。
大分空港と自宅(大分光吉から2キロ・大分駅から8キロ程度)の往復を考えると、燃費の悪い私の車でも、自宅から1泊2日とすれば、駐車場代込で「可変費」は4,000円程度である。回数券で空港バスの往復が2,000円・大分駅から自宅までのバス代が約800円(往復)であるが、バスに乗れなければ片道2,000円のタクシー代がかるため最大で往復6,000円となり、これではクルマの方が有利になってしまう。
バスの狙うべき客層、いや、乗ってくれる客層は、「目的地へドアtoドアに近く動けて、安くて、行きたい時間帯にあること」であるとすれば、例えば大分市近郊の団地の住民で大分空港なり福岡天神へまっすぐ行くことができるということを求めている層は多いと思われる。空港であれば大人のほぼ全年齢層が(荷物があったら余計に)、福岡であれば若者・主婦層・元気な高齢者などがターゲットになる。
家の前から空港や福岡に行けるということは、その団地の潜在価値を確実に上げ、バス会社への評価は上がると考える(ちなみに、筆者の実家は最初日に数本からスタートした天神直通のバスが、現在では30分に1本まで成長しており、元気な高齢者が少し遠方の大病院や福岡への買物等に利用、学生の通学にも普及している。それまでメインの系統であった営業所への系統は、団地乗り入れ系統が増えて脇役においやられている)。
こういったことを考えるにつけ、「オール公共交通」で自動車にたたかわないと、公共交通の利用はじり貧にしかならない。ニーズの発掘ができていない一方で被害を受けたときだけ声高に言うのでは、申し訳ないが支持は得られない。バス会社の権益なんて利用者には関係ないのである。そんなことを言っている間に、お客はクルマに逃げていく。共同運行して半分収益を取られる被害より(一過性で済む)、車に逃げる被害の方が確実に大きい(傾向が永続的だから)はずである。
佐伯線にしても北九州線にしても、誰に使ってほしいかわからないダイヤになっている。例えば佐伯線の福岡行きは11時過ぎに天神着(逆便も佐伯着はほぼ同じ)が、11時からでは買物や観光には遅すぎる(北九州-大分線の初便も同じ)。このため、一番のターゲットになりうる価格弾力性の高い層を逃してしまう。また、帰り便も17時ごろでは早すぎて、ゆっくり買い物もできない。停車停留所の一部には、そこまでどうやっていくのか(あるいはその停留所は客が集まるところに近いのか)が今一つ見えてこないところがある。
ぜひ、利用者の行動パターンを考えたダイヤ・路線設定を考えて頂きたい。その意味で、じつは大きな示唆になるのが、以下の事例であろう。
(1)佐世保-福岡線の佐々延長
佐々は佐世保を母都市とする都市圏に入る地区であるが、このような地区から福岡に出ようと思えば、鉄道の乗り継ぎを強いられていた。延長は察するに西肥バスの車庫の問題と思われるが、それであったとしても、身近なところから高頻度で福岡まで直通できる効果は大きい。
大分であれば西大分生石地区・明野・パークプレイス・ふじが丘・富士見が丘・松が丘などの大きな団地が、縁辺部にビッグマーケットとして控えており、光吉インター~大分大学近辺には学生が多く住んでいる。まさに、「佐々」のような場所が存在している。別府で立命館APUが高速バスで福岡までダイレクトで結ばれるように、こういうビッグマーケットから大分空港や福岡へ(朝晩の出入庫時間帯だけでも)延伸されれば、宣伝次第でかなり有力な路線になる。
このことは、熊本の「武蔵ケ丘」「西合志」バス停を見るとよくわかる(たまたま高速道路が団地に近いことは大きいが、このようなバス停が認知されたことで福岡までの通勤客が出ている事実は無視できない。JRの特急もバス停そばの駅に乗り入れているが、JRで通勤する人はいない)。
佐伯線・北九州線は、ダイヤ設定とともに、人の集まる地区のフォローが必要になる(佐伯線は、福岡-大分の実勢に合わせた価格設定も必要)。また、宮崎-福岡の「サンマリンライナー」というツアーバスは、宮崎側の停留所設定が実に細かく、人の貼りついているエリアをフォローしている(車庫の関係で佐土原まで行くが、途中の停留所設定がうまい)。また、団体ツアーの一部には、大分駅発着でも途中の主要ポイント(団地に近いところ)で集客するコースがある。これも参考になろう。
(2)下関-大阪線「ふくふく号」の「大阪発」の便
トワイライト神戸の運休、およびツアーバスの時間設定に際して参考になる事例である(残念ながら逆便は大阪のラッシュ回避の関係で使いにくいダイヤになっている)。
大阪発の時間を見れば、22時20分と、福岡や九州にいく便と大差ない。この便が希少性と利用価値を上げているのは、実は神戸三宮の発車時間が23時55分と遅いことである。
大阪から千里や宝塚など集客していくことは既に彼の地では当たり前のモデルとなっているが、この迂回のおかげで神戸まで1時間半もかかる。JRの新快速ならば20分で着く距離である。
ただ、この1時間半のおかげで、三宮から乗車すると、関西各地から九州各地への移動も含め実に使い勝手の良いダイヤになっており、ここ数回のったが週末は満席近いことも多い状態である。
大阪発の九州向けのツアーバスは、なぜか判で押したようにみな22時発で、神戸三宮が23時発になっている。ツアーバスの場合手続きが要るので早めに行かねばならない上、乗り場は駅から離れているので、時間には余裕が必要となる。粗い言い方をすれば、30分前倒しでダイヤを見ないといけない。そうなると、かえって定期バスよりも不利である。大阪-福岡線は神戸を通らないので神戸から乗るのは無理だからその時点で有利と言えば有利だが、じつはツアーバスのダイヤでは、大阪に用のある若者層(=ツアーバスの想定する客層)を捉えられないことがあるのである。卑近な例でいうと、大阪で音楽関係のイベント(ライブ等)があった場合、休日の18時開始でも終了は21時、19時ならば22時になり、これらのツアーバスには乗れないのである(会場を出るまでに時間がかかり、会場になるホール類は大阪駅から遠い)。そこで大阪-三宮の1時間を活かしたいところだが、ギリギリ間に合うか下手したら間に合わないこともある。18時19時開始のイベントは食事しないまま出ることもあるから、下手すると食事もままならない(買えないこともありうる)ままバスに飛び乗らないといけない。
ところが、このふくふく号の23時55分であれば、それからさらに1時間遅いので、イベントが伸びても余裕である(飲みは無理としても食事ぐらいならばできる)。しかも6時間程度の睡眠時間を取れて新山口が6時過ぎ(新幹線に乗り継げば8時台に博多着)、下関着は朝8時となっており、しっかり寝た上で10時ごろには福岡に入れるのである(ちなみに朝食をゆっくりとって小倉に行けば、週末ならば10時発の大分線の高速バスに乗れて13時には大分につく。JRであれば10時台には着く)。
トワイライト神戸号のネックは、鹿児島まで足をのばすために始発が遅くなると到着が遅くなってしまうことである。そのため、神戸の発時間が20時代と異常に早い。これでは関西での夕食もままならない(鹿児島発も早すぎる。ただ、熊本発は良い時間帯)。
ただ、たとえば双方の発地の発車時間をかなり下げて(要するに大阪線よりも遅い時間を走るように割り切って)走るようにすれば、実は活路があったかもしれない。例えば神戸を23時台に下げると、熊本着が9時ごろになり、人吉10時半、鹿児島は12時ごろになる。夜行バスを降りてそのまま観光や商用に行くには、夜行バスの6時~8時着では早すぎて、朝食すら取れない(現在のトワイライト神戸の神戸発熊本着は6時ごろで、朝食をとれる店がない上、路線バスが走ってない時間帯で動けない。交通センターのシャワールームが閉鎖されたため着替えもできない)。しかし、この時間帯の到着であれば有利になる(熊本市内の9時着ならビジネスにも楽であろう)。戻りも大阪市内に入らないので渋滞の心配はなく、神戸からの電車の乗り継ぎを上手にPRすれば、大阪などへの商用・観光にも使えるものとなったであろう。
私用で夜行バス往復を強いられたことがこの1カ月で2回ほどあった。ツアーバスの独自のサービスを試そうと調べるのだが、実は2回とも通常の高速バスを利用している(復路は2回ともこのふくふく号+大分線高速バス)。なぜ使えないかというと、どの会社も同じ時間帯になっていて、しかもそのダイヤが往路は(大分~小倉の)JRとの接続が悪く、復路は上述の理由でイベント終了時間の関係で間に合わないことが予想されたために回避したのである。ツアーバスは路線バスより柔軟なサービスが提供されいているものだと思っていたが、これでは過去に4条事業者のダブルトラック路線で似たようなダイヤを引いて客の取り合いをしていた競争を、ツアーバス会社がやっているようにしか見えず、客の顔が見えているのが疑問にすら覚える。この「ふくふく号」は見事にニッチマーケットを開拓した成功例と言ってよい。しかも、ツアーバスをあれほど敵視している4条事業者が立派にやっているのだから、他の事業者は単に「できなかった」のではなく「やっていなかった」だけということになる。
もちろん、路線バスの場合は都市部のラッシュ対策があり、到着が早まるダイヤになっていることは仕方ないであろうが、それこそ遅延時に鉄道への乗り換えを薦めたりということはありうる(東京で実験をやっている=用賀、つくばエクスプレス沿線)。乗りかえられる路線をリスク回避で組めば済むだけである。乗り換えで数百円の収入が減ったところで、「全く乗らない」選択をされて数千円・数万円の収入が減るダメージよりはマシである(高松-大阪・神戸間の高速バス新規参入事業者の「フットバス」が、自社で大阪便を持ちながらも、速達性を売りに神戸での乗り換えを薦めていて、JR・阪急の切符とのセット販売を行っていることは特筆に値する)。
頑張ってほしい、あるいはせっかくのビジネスチャンスを無駄にしないでほしいと思いパトスが入って書き連ねてしまったが、どこかでこのような提案が反映されることがあれば、競合相手が入っても恐れることはないはずであると信じている。もしやらなければ、ツアーバスが入る可能性だって十分にあると思う。「トンビに油揚げをさらわれた」後で嘆くような姿は、見たくない。
最近のコメント